柔道 それは極めて危険なスポーツ

中学校柔道部の練習中の事故で子供を亡くした父親の独り言

急性硬膜下血腫

 

急性硬膜下血腫

 私の娘の死因は「急性硬膜下血腫」というものでした。
これは自動車事故や転落事故でよく起きる頭部外傷で、予後不良となる確率がとても高い。
その「急性硬膜下血腫」が、実は柔道事故でも多いのです。
つまりそれは、柔道の技で投げられると、自動車事故並みの衝撃を頭に与える可能性があるという事。
そして、娘の時のように緩めに投げた筈でも、その衝撃は予想を大きく上回る場合もあるという事。
それほど柔道とは危険なのです。

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問題意識

事故の根源

 

「スポーツに怪我はつきもの」
確かにそれはそうだと思います
「柔道は組み合って相手を投げる競技なのでどうしても怪我が多い」
これも理解できます
しかし問題は、柔道では怪我では済まない重大事故が頻繁に起き、命をも落とすという事です。
これは私が言うまでもなく、指導者や選手そして全ての柔道関係者が認識しているはず。そして事故が起きないよう細心の注意も払っているはず。
それなのに死亡事故は無くならない。
なぜか。
それは、危険という認識はあっても実感が無いからだと思うのです。
事故が起こるとは思えないような状況下でも、わずかな気の緩みと不運とが重なり事故は起きます。
しかし多くの人は「まさか自分のもとでは起きまい」と考えてしまう。
それこそが気の緩みであり、事故の根源なのだと思います。
もしかしたら、柔道を危険なスポーツにしているのは、他ならぬ柔道をやってる方々なのかもしれません。

起きてからでは遅い

 

柔道に関わる全ての方々へ申し上げたい。
これまでの数々の事故を振り返りその重さを胸に刻み、想像力を最大限に働かせ、それが決して他人事ではない事を実感して、事故の防止に全力で取り組んで欲しい。

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受け身

 

 

受け身が正しく出来ていれば危険では無い

 

この言葉をこれまで何度か耳にしました。

私は、とても違和感を感じます。

なぜなら、裏返せば「受け身が正しく出来てなければ危険である」と受け取れるからです。

「受け身が出来てなかったとしても危険ではない」ならわかるのですが。

 

もし受け身がとれていなければ・・・

 

柔道における安全性は、主に投げられる者の受け身によって確保されているといえます。
しかし、当然、特に初心者では、受け身の技量に個人差があります。防具のように装着すれば一定の安全効果が得られるものとは違います。
これに関しては私が言うまでもなく柔道関係者なら皆さん認識されていると思うのですが、柔道の安全性を議論するうえで「受け身がとれていれば安全」といった趣旨の言葉がなぜか出る。
これでは、受け身が取れているという前提で安全対策を進めているようにしか感じられないし、安全に対しての考え方が根本的に違うような気がします。

だから毎回同じ解決策しか出ない。そして毎回同じ事故が起きる。


「受け身が出来ていなければどうなるか」
ここを出発点として安全対策を考えることも必要ではないでしょうか。

危険な技

大外刈り

 この技で重大事故となったケースが極めて多いです。
私の娘も大外刈りをかけられ死亡。
平成28年の館林市大田原市での事故も大外刈り。
さらに過去にさかのぼっても、大外刈りをかけられ死亡した事例は多数あります。

抜本的な対策

今から30年以上も前の事ですが、当時無敵を誇っていた有名柔道選手が蟹ばさみという技で大怪我を負いました。
この時は、早急にこの技の是非を問う話し合いが行われ、後に禁止技となりました。
一方で大外刈りは、何人もの尊い命が失われているにも関わらず、注意喚起や指導改善を繰り返すだけ。

この対応の違いはなぜ?
大外刈りを全面的に禁止技とするのは難しくても、「小中学生に限っては禁止」とするなど何か具体策は打てないのでしょうか。

柔道及び学校関係者の方々が安全対策に力を尽くしている事はわかります。
がしかしこれでは、「命の重みは人によって異なる」と考えているようにしか受け取れません。
このような言い方をすると、辛辣を通り越し、もはや無礼にあたるのかもしれませんが、一人の遺族としてはそう思えてならない。

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何故そこまで危険だといえるのか

約束練習

 

娘の死亡事故が起きたのは、約束練習といって、二人一組で技を事前に決めて投げるという練習の最中でした。
この時は「大外刈りで投げるよ」「はい」と、投げる部員と投げられる娘との間で確認し、緩めに投げたという事らしい。
そして、その場には全柔連公認のA級指導員である顧問と、その他2名のボランティア指導員(いずれも柔道有段者)がいた。
つまり、指導員が3名もいて、投げる技を事前に相手に伝える約束練習で、さらに緩めに投げても、運が悪ければ死亡するのです。
いくら娘が初心者だったとはいえ、こんなにも簡単に人が命を落としてしまうとは。

初心者でなくても

 

場所は変わるが、昨年起きた群馬県館林市の中学校での事故も約束練習中の事故であり、この時は3年生部員が重篤な頭部外傷を負った。

 

このように、基本的な練習をしていただけでも重大事故は起きるのです。
危険過ぎる。あまりにも危険過ぎる。柔道というものは。

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懺悔

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頭が痛い

 

事故の前日に練習から帰ってきた娘が「頭が痛い」と一言つぶやき、その日は夕食も残し早々に入浴を済ませ、早めに床に就きました。

心配になったので部屋で少し話をしましたが、本人は「大丈夫」というので、疲れも出ているだろうと思いそのまま寝かせました。
翌日、彼女は普段どおりに起床し朝食も済ませ、いつもと変わらない様子で支度をしていました。私は前夜の「頭が痛い」の一言が少し気になってましたので「ちょっとでも気分が悪かったら先生にすぐに言いなさい」と言って送り出しました。
それが彼女と交わした最後の言葉。
その日の夕方に事故は起こり、5日後には帰らぬ人となってしまった。

親として

 

子供が柔道部に入ったにも関わらず、私は全日本柔道連盟が発行する柔道の安全指導書を読んでないどころか、その存在すら知りませんでした。
過去の死亡事例、頭部外傷や脳震盪の危険性、セカンドインパクトシンド・ロームなど、安全に対する予備知識が全くの勉強不足だったのです。

もちろん、前日の「頭が痛い」と事故との因果関係はわかりません。

がしかし、「頭が痛い」の一言を重く受け止め、学校を休ませ病院に行っていれば、少なくともあの日あの時の事故は避けられたはず・・・
そう思うと、悔やんでも悔やみきれません。

柔道を習う子供達のすべての保護者へお伝えしたい。
どんな小さな異変にも気を付け、細心の注意を払って子供を見守ってください。

それが出来なかった私は、娘に深く謝り懺悔したい。

 

はじめに・・・柔道の死亡事故の遺族として

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柔道は死亡事故が多い危険なスポーツ

柔道の死亡事故の一遺族として申し上げたいこと

平成27年に福岡市の中学校に入学した私の娘は、柔道部へ入部直後、練習中の事故により死亡しました。

期待に胸を膨らませ中学生になった生徒が犠牲となった死亡事故。

 福岡市立中学校柔道事故調査報告書 (722kbyte)pdf

 

あれから2年  悲しい事故は繰り返される

娘の事故以前の約30年間で、なんと100人を超える方々が柔道で命を落としているという。これは尋常ではない。

そして、この不幸な出来事がもう二度と起きないよう、他の方々が同じ悲しみに暮れる事のないよう願っておりましたが、娘の事故以降も国内で新たに1名の死亡事故と1名の重篤な頭部外傷事故が起きています。

多くの柔道関係者や教育関係者が、長年にわたり事故防止に力を尽くしているにも関わらず、死亡事故は繰り返される。
この現実を目の当たりにすると、一人の遺族としては虚しさだけがこみ上げてきます。
いったいなぜ事故は無くならないのか、なぜ同じような事故が繰り返されるのか、この事を私なりに考え抜いた結果、「柔道が危険極まりないスポーツだからである」という結論に達しました。

常に死と隣り合わせの危険なスポーツ それが柔道

過去の犠牲者の異常なほどの多さ、娘および他の方々の事故に関する報告内容、安全対策を施しているのだが再発する事故、こういった事から判断するとこれは決して大袈裟な表現ではありません。
柔道に関わる全ての方々がその認識を持ち、細心の注意をする必要があります。
そして娘の死を無駄にしないために私がすべきは、柔道が他に類を見ない極めて危険なスポーツである事を、愚直に訴え続ける事なのです。
いつの日か、柔道が危険でないスポーツとなるのを願って。